シャツの襟型は、デザインや素材、芯地、加工方法次第でスタイルや印象を大きく変えられる重要な要素です。今回は、襟型の特徴を中心にマニアックな視点から掘り下げて解説します。
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メンズシャツの襟型とその特徴|スタイル別の選び方
レギュラーカラー
▼特徴
最もオーソドックスでバランスの取れたメンズシャツの襟型。襟の開きは75~90度で、どんなネクタイにも合い、幅広いシーンで使えますが、ビジネスやフォーマルシーンでの使用が一般的です。ネクタイの結び方はプレーンノットやセミウィンザーノットなどの細めのノットが相性良く、すっきりした印象を与えます。
適したシーン: ビジネス、フォーマル、カジュアル。
ワイドカラー
▼特徴
襟先が100~140度と広く開いたデザイン。クラシックでエレガントな印象を与え、ビジネスシーンやフォーマルな場面で好まれます。20世紀初頭にイギリスのウィンザー公が好んで着用していたことから「ウィンザーカラー」とも呼ばれ、それに合わせたウインザーノットなど太めのネクタイのノット(結び方)と相性が良いとされています。
適したシーン: ビジネス、フォーマル
セミワイドカラー
▼特徴
レギュラーカラーとワイドカラーの中間的なデザインで、襟の開きが90度から100度程度となっています。オールマイティな襟型で、ビジネスからフォーマル、カジュアルまで幅広く対応可能。クラシックでありながらモダンな印象を与えることができます。
ワイドカラーはよりクラシックで威厳ある印象を与え、セミワイドカラーは汎用性が高く、どんなシーンにも適しています。
適したシーン: ビジネス、フォーマル、カジュアル。
ボタンダウンカラー
▼特徴
ボタンダウンシャツの最大の特徴は、襟先がボタンで固定され、カジュアルながらきちんと感が保たれます。ノータイでも形が崩れません。カジュアルなシーンやクールビズに最適です。ビジネスカジュアルとしても使用され、職場のカジュアル化が進む中で急速に普及しています。
ボタンダウンシャツのデザインは、イギリスのポロ競技から派生しました。アメリカのブルックスブラザーズがこのデザインを普及させ、現在のスタンダードとなりました。
適したシーン: ビジネスカジュアル、カジュアル、週末のお出かけなど。
ホリゾンタル(カッタウェイ)カラー
▼特徴
襟先が180度以上と極端に広がるデザインが特徴です。通常のワイドカラーよりもさらに開放的な襟型で、モダンで大胆な印象を与えます。180度程度のものをホリゾンタル(水平)、さらにそれよりも開いているものをカッタウェイと呼んでいます。
ノーネクタイで洒脱な雰囲気を出すのがおすすめですが、ネクタイが必要な場合は、ウィンザーノットなど太めの結び目と相性が良い襟型です。
適したシーン: ビジネスカジュアル、パーティー(結婚式の二次会など)
スタンド(マオ)カラー
▼特徴
襟が立ち上がっている(立ち襟)シンプルなデザインで、ネクタイを使用せずに着こなすことが一般的です。バンドカラーとも呼ばれる。ミニマルでありながらもエレガントな印象を与えます。中国の人民服や学生服の印象が強いデザインです。マオカラージャケットと合わせたフォーマルなシーンか、ワークウェアのようなカジュアルなシーンが多く、一部の方を除いてはビジネスシーンでは使うことは少ない。
適したシーン: フォーマル、カジュアル。
ウィングカラー
▼特徴
襟先が小さく折られた立ち襟で、襟先が鳥の翼のように見えることから名付けられました。タキシードに適した襟型で、特にボウタイ(蝶ネクタイ)との相性が抜群です。フォーマルなイベントには欠かせません。
適したシーン: フォーマル
ピンホールカラー・タブカラー
▼特徴
ピンホール:襟にアイレットと呼ばれる穴があり、その穴にピンを通してネクタイの結び目を裏から持ち上げ立体的に見せるクラシカルなデザイン。特にクラシカルな装飾品としてイギリスで広く一般化されています。ピンにも種類がありシーンなどでピンを使い分けることができる。
タブカラー:こちらもネクタイを立体的に見せるデザイン。襟の左右にタブ(紐)がついており、ネクタイを持ち上げる機能がある。ピンホールより若干カジュアルな印象になる。
それぞれ、あえてノータイでコーディネートする高度なテクニックもしている人もいる。
適したシーン: ビジネス、パーティ(結婚式の二次会など)
ラウンドカラー(クラブカラー)
▼特徴
襟先が丸みを帯びているクラシカルなデザインで、柔らかく上品な印象を与えます。英国貴族が愛用していた伝統的な襟型です。クラシックなスタイルだけでなくプレッピースタイルにも愛されているデザインです。
適したシーン: ビジネス、カジュアル
ワンピース(イタリアン)カラー
▼特徴
襟と前立てが一体化しているシンプルなデザインで、前立ての開き具合から襟まで美しいロールラインを作り出します。ノーネクタイでもエレガントかつセクシーに決まります。クールビスの時期にも人気な襟型です。少し多めにボタンを開けて襟のロールを楽しみたいデザインです。
適したシーン: ビジネスカジュアル、カジュアル、リゾートでのリラックスタイムなど
オープンカラー(開襟)
▼特徴
オープンカラーは、襟元が開いたデザインで、通常の第一ボタンがなく、リラックスした雰囲気を持つ襟型です。シャツの襟がV字に開いており、軽く折り返されたデザインが特徴的です。このスタイルは、ネクタイを使用せずに着用することが一般的で、カジュアルやリゾートスタイルにぴったりです。アロハシャツやキューバシャツ、ボーリングシャツなどが代表的です。
適したシーン: カジュアル、リゾートでのリラックスタイムなど、ハワイなど一部の地域ではフォーマルシーンも可
ナローカラー
▼特徴
ナローカラーは、30〜80°程度の開きで襟先が狭く、通常よりもコンパクトなデザインの襟型です。襟の開きが狭いため、シャープでスマートな印象を与えます。ミニマルでスタイリッシュなデザインが特徴で、スリムフィットのシャツや細身のネクタイと合わせることが多いです。特にモダンな印象を強調したい場合に適しています。あまりメンズの襟型には採用されることが少ない。
適したシーン: カジュアル、パーティー
番外編
クレリックシャツ
襟と袖口がホワイトで、それ以外の部分が柄や色付きのシャツです。英語の「cleric(牧師)」に由来し、牧師の服装に似ていることから名付けられました。ビジネスシーンやカジュアルな場面で着用可能。
ドゥエボットーニ(トレボットーニ)
ドゥエボットーニは、イタリア語で「2つのボタン」を意味し、台襟(第一ボタンの位置)に2つのボタンが付いた個性的なデザインです。3つになるとトレボットーニと呼ぶ。このデザインは、台襟が高くノーネクタイでも襟がしっかりと立つため、ビジカジやクールビスにオススメ。一時期一世を風靡したデザイン。
スキッパー
首元のボタンがなく、襟を開けて着用するデザインです。プルオーバータイプで、ボタンのないポロシャツをイメージすると分かりやすいです。カプリシャツもスキッパーシャツの同類。カジュアルやリゾートシーンに最適。
ショートポイント
ショートポイントカラーは、襟先が短くスポーティでカジュアルなイメージのデザインです。襟が短いためノーネクタイのスタイルと相性がよいです。
代表的なシャツの素材と特徴|シーン別の最適な選び方
シャツの襟型に加えて、素材の選び方もスタイルや印象を大きく左右します。素材の違いによって、シャツの質感や着心地が変わるだけでなく、適したシーンやスタイリングも異なります。ここでは、代表的なシャツ素材について、その特徴とシーン別のおすすめを解説します。
ポプリン
▼特徴
細かく織られたポプリンは、軽くて通気性が良く滑らかな表面が特徴です。シャープでクリーンな印象を与えるため、ビジネスシーンやフォーマルな場面に最適です。
適したシーン: フォーマル、ビジネス
ブロード
▼特徴
ブロードは、非常に細かく平織りされた生地で、柔らかくも耐久性のある素材です。ポプリンよりも細い糸で薄手だが高密度で織っているのでしっかりした風合い。シンプルで上品な光沢感があり、フォーマルな場面やオフィスでの着用に適しています。
適したシーン: フォーマル、ビジネス
オックスフォード
▼特徴
オックスフォードは、厚めで耐久性があり、少し粗めで立体感の織りが特徴的です。カジュアルシーンにぴったりで、ボタンダウンシャツなどに多く使用されます。
適したシーン: カジュアル、ビジネスカジュアル
シャンブレー
▼特徴
インディゴを使うことが多いのでデニムのような表情が特徴の素材です。経糸(たていと)に色糸を使い緯糸(よこいと)に白糸を使った平織りで、インディゴ染料を使うことが多いです。カジュアルシャツやワークシャツに多く使用されます。
適したシーン: カジュアル、リゾート
ツイル
斜めの織り目が特徴的なツイル(綾織)は、耐久性が高く少し厚みがあります。ドレスシャツからカジュアルシャツまで幅広くに使われ、シンプルなシャツにも深みを与える素材です。
適したシーン: フォーマル、ビジネス
フランネル
▼特徴
フランネルは、優しく起毛(微起毛)した素材で、冬の寒い時期に保温性を高めます。カジュアルで温かみのあるスタイルに最適で、チェック柄のシャツなどに多く使われています。
適したシーン: カジュアル、秋冬のコーディネート
リネン
▼特徴
リネンは、夏にぴったりの通気性が良く、軽くて涼しい素材です。しわがつきやすい特徴がありますが、それがリラックス感を醸し出すため、カジュアルな場面で人気です。アイロンをちゃんとかけてシワを減らしたらビジネスでも使えます。
適したシーン: ビジネス、リゾート、カジュアル、春夏のコーディネート
芯地や加工方法で変わるシャツの表情
シャツの襟型は、芯地の有無や洗い加工などの仕上げによって、その印象を大きく変えることができます。シーンに応じて適切な仕上げを選ぶことで、よりスタイリッシュなコーディネートが可能です。
芯地について
襟の内部は、芯地と呼ばれる生地で形状を保つために重要な役割を果たします。
芯地は、シャツの特性、着用シーンに応じて異なる種類が使用されます。
硬い芯地
クラシックやエレガント、ビジネスシーン向けに作られるシャツに多く使われる。
ソフトな芯地 または 芯地なし
カジュアルなシーン向けのシャツに使われることが多い。
洗い加工
襟だけではないが、シャツを洗い加工(洗いざらし加工)を施すこともある。ヴィンテージ感やラフ感を演出してカジュアルなテイストを生み出すために施されます。素材もソフトになることが多く着心地も変わってきます。
シャツは千差万別。一期一会の出会いを楽しむ
シャツの襟型は、そのスタイルや印象を大きく左右する重要な要素です。ラウンドカラーのピンホールシャツなど、今まで紹介してきたデザインの組み合わせも多くあります。
さらに、素材の組み合わせやシルエット(パターン)、芯地の有無、加工方法、糸の色、ボタンの種類などもあり千差万別です。これらをうまく使い分け、ビジネスからカジュアルまであらゆるシーンで最適なシャツを選んでください。
また、トレンドによっても左右されるファッションアイテムでもあるので、一期一会の出会いを楽しんでください!