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あの頃のキャップが呼び覚ますもの
街の路地裏に古びた帽子店がある。ガラス越しに並ぶキャップの中でも、ひときわ存在感を放つのが【ニューエラ】の59FIFTYだ。
学生時代、ヒップホップに憧れたあなたは、まだ高価だったこの帽子に手が出ず、友人がかぶる姿を羨ましく眺めていたかもしれない。社会人になり余裕が出た今、当時の憧れをもう一度手に取るなら、ただの帽子では物足りない。そこにまつわる【都市伝説】や歴史、プロの着こなしを知ることこそ、大人の楽しみ方だ。
この記事では、ニューエラのキャップをめぐる都市伝説を紹介。読後には、キャップを選ぶ目が変わるはずだ。
都市伝説① 金ステは“勇気の証”だった?
物語は1990年代後半のアメリカから始まる。ショーウィンドーには煌びやかなキャップが並び、若者たちはこぞって【金色のサイズシール】を剥がさずにかぶった。この行為には妙な噂がついて回った。「シールをつけたままのキャップは、盗んできた証拠だ」というものだ。ショップから盗んだ帽子をそのまま堂々とかぶることが、危険を恐れない【勇気の証】とされたのだという。
この噂は噂らしい根拠がなく、日本に伝わる頃には「シール付き=度胸があるヤツ」と歪曲されていた。しかし噂の真偽はさておき、金色のシールが話題の中心になったのは事実だ。それがストリートの“記号”として機能した時代があった。
都市伝説② 金ステは“新品の証明”だった?
別の解釈では、金シールを剥がさないのは【新品の証明】を見せつけるためだとされる。箱から取り出したばかりのフレッシュな状態をアピールし、「この帽子は正規品であり、堂々と新品を買える経済力がある」と無言で誇示する。丁寧に手入れされたスニーカーの履きジワを嫌う心理に似ている。「俺は余裕がある」と静かに主張するサインだ。
真実は両方の噂が混ざりあって広まったのかもしれない。だが結果的に、金シールがストリートで注目を集めたのは間違いない。
都市伝説③ シールを剥がすと“初心者扱い”?
このシールを剥がすかどうかを巡り、もうひとつの都市伝説が生まれた。「剥がすのは素人」「残すのは玄人」といった二分法だ。街角で交わされる冗談が膨らみ、「剥がしたら笑われる」と若者を震わせた。キャップを買ったばかりの青年がシールを剥がすと、「ああ、初心者だな」と見られてしまう。一方、シールを残す者は「分かっているヤツ」と見なされた。
もちろん、そんなルールはどこにもない。コミュニティの中で勝手に育った空気に過ぎないのだが、こうした【噂】がストリート文化を作ってきたのだ。
都市伝説④ キャップの角度は“暗号”だった?
次なる噂は、帽子の【被り角度】に隠された暗号の話だ。ある者はまっすぐに、ある者はわずかに斜めに、またある者は後ろ向きに。ニューヨークのストリートでは「キャップの傾きで所属するチームがわかる」と言われた。わずかな角度の違いが、仲間内だけに通じるメッセージとなる…そんな噂だ。
実際には統一ルールがあるわけではない。ただし、非言語のサインが多いストリート文化では、角度やロゴの位置で個性を示す遊びが盛んだった。「まっすぐ=ニュートラル」「左斜め=特定のチーム」「後ろ向き=ノーコメント」といった暗黙のプロトコルは、内輪のジョークとして楽しむのが正解だ。
都市伝説⑤ MLB選手用は市販品と別物?
「俺たちが店で買えるニューエラは、選手がかぶっているものとは違う」――そんな噂も広まっている。プロ選手が使用するモデルは市販品より高品質で特別な素材を使っているというのだ。実際、調べてみるとニューヨーク・ヤンキースなどのMLB選手たちはオンフィールド用に微調整されたフィット感や通気性を求め、細かな変更が施されたモデルを使用している。
ただし、【公式には】59FIFTYの公認コレクションは一般販売品と同じ基準で作られている。プロ選手用に微調整が加わる場合があるものの、基本的な設計や素材は共有している。つまり「完全に別物」というわけではなく、憧れを掻き立てる程度の差が存在するということだ。
都市伝説⑥ キャップは“開運のお守り”?
最後はユーモアに溢れる都市伝説。「ニューエラをかぶると恋愛や仕事がうまくいく」という噂だ。まるでお守りのように扱われ、キャップをかぶることで運気が上がると信じる者まで現れた。もちろん科学的根拠はない。だが心理学的には、見た目を整えると自信が湧き、行動量が増えて良い結果が出やすいという効果はある。新しいキャップをかぶって背筋が伸びた自分に気付き、ポジティブな気持ちで出かければ運が巡ってくるかもしれない。
Official Notes|神話の外側にある事実だけ

ここからは【公式が語る事実】を淡々とまとめよう。
創業と59FIFTYの誕生
ニューエラは1920年にドイツ移民のエアハルト・コッホが、アメリカ・バッファローで創業。
1934年にはクリーブランド・インディアンス用のキャップを製作し、1954年には息子のハロルド・コッホがMLB球団の帽子を統一する目的で【59FIFTY】を開発した
59FIFTYの普及と特徴
1970年代には全24チーム中20チームが59FIFTYを採用、1980年代半ばには一般販売が始まり、1993年にはMLB唯一のオンフィールドキャップとなった。デザインの特徴はフラットなバイザー、八本のステッチ、深めのクラウン、そして汗止め用のアイレット等である
事業の拡大
公式によると、1920年の初年度に60,000個のキャップを生産し、1993年以降はMLBの独占的公式サプライヤーとなっている。
59FIFTYの成功は、ニューヨークの映画監督スパイク・リーが1996年に特注の赤いヤンキースキャップを依頼したことでも後押しされ、大衆の間に爆発的な人気をもたらした。
アンダーバイザーの変遷
当初は緑色が標準だったアンダーバイザーは、光の反射を抑えるためグレーに変更され、2007年にはさらに黒に変わった。黒は最も眩しさを抑えることが研究でわかり、現代のオンフィールドモデルはポリエステル素材と黒アンダーバイザーを採用している。
モデル展開
59FIFTYの他に、後ろをスナップで調整する【9FIFTY】、伸縮素材で半フィットの【39THIRTY】、調整式でカーブのついた【9FORTY】、芯のないくったりした【9TWENTY】などがあり、用途やファッションによって使い分けられる。さらにロープロフィール型はクラウンを低めにして深すぎ問題を解消し、大人の横顔を引き締めるモデルとして人気だ。
シルエット早見|59FIFTYと“9系”の違いを一発理解
モデル選びに迷った時は、次のポイントを押さえよう。
- 59FIFTY:後ろに調整がないフィッテッドキャップ。高めのクラウンとフラットバイザーが特徴。正統派かつ存在感を放つモデル。名称の由来については諸説あり、「カタログ番号5950」「モデル番号」「初期生産で使った布地ロールの番号」などとされるが、公式見解はない。New Era キャップのサイズ表
- 59FIFTY Low Profile:クラウンを低く、バイザーにほんのりカーブを持たせた派生モデル。被りが深すぎず、40代の顔立ちにも自然に馴染む。
- 59FIFTY Retro Crown:クラシックな風合いを出すため、クラウンに微かなシワ加工が施されている。抜け感を楽しみたい人向け。
- 9FIFTY:スナップバック仕様でサイズ調整が可能。ストリートテイストの強いスタイルや差し色を入れる時におすすめ。
- 39THIRTY:伸縮バンド付きで半フィット。最初からカーブがついており、スポーティーな印象。
- 9FORTY:金具やベルトで調整するタイプ。中くらいのクラウンとカーブバイザーで汎用性が高い。
- 9TWENTY:芯が弱く柔らかいクラウンで、くったりとした風合い。リラックスした雰囲気を出すのに適している。
- A-Frame/Trucker:前面に芯があり、後ろはメッシュ素材。夏場やアウトドアシーンで活躍。

出典:https://www.e-begin.jp/article/216246/
New Era キャップのサイズ表
59FIFTY/Low Profile 59FIFTY(フィッテッド)サイズ一覧(cmのみ)
キャップサイズ | 頭囲(cm) |
---|---|
7 | 55.8 |
7 1/8 | 56.8 |
7 1/4 | 57.7 |
7 3/8 | 58.7 |
7 1/2 | 59.6 |
7 5/8 | 60.6 |
7 3/4 | 61.5 |
7 7/8 | 62.5 |
8 | 63.5 |
出典:New Era公式サイトの59FIFTYサイズチャート:https://www.neweracap.jp/pages/size-chart
自分だけの物語を重ねて
ニューエラのキャップには、単なる帽子を超えた物語が宿っている。金色のシールや角度の噂、プロ仕様への憧れ。
それらはあくまで【都市伝説】だが、語り継がれることで文化の厚みを増していく。歴史を知り、さまざまなモデルの特性を理解したうえで、自分自身のストーリーを重ねれば、そのキャップはあなただけの相棒となる。
次にニューエラを手にするときは、ぜひこの記事の一節を思い出してほしい。自信を胸に、背筋を伸ばして、街へ繰り出そう。